うつわと向き合うこと

陶芸家の大和田友香さん。

2018年より本格的な作家活動をスタートされた若い作家さんですが、器やものづくりへの向き合い方がとても素敵でしたので、大和田さんに伺ったお話を是非ご紹介させてください!

制作される上で心がけている事はありますか?

粘土の可塑性、焼成によって起こる変化や現象など、陶芸の面白みを見つけるために釉薬や素地の粘土の組み合わせ、焼成方法も実験的に様々な方法を試してみています。

見つけた面白みを生かすために、過剰な装飾はせず、シンプルなかたちを意識し、そのような中でもどこか独自性や新しさがあり、人々をはっとさせる作品を目指し制作しております。

表面的な華やかさだけでなく潜在的にどこか惹かれてしまう。そんな作品をお届けできればと考えております。

Kinari plateはすごく優しい印象を受けました。制作の上でのこだわりを教えてください。

Kinari plateは少し黄みがかった白色でやさしい印象の中、縁を黒で凛と引き締めました。器の形状的にも毎日の食卓に並べて頂ける姿を望んでいまして、使う際に緊張感のあるものより温かみを大事にしたいと思いました。

砂交じりの素地と貫入の表情でアンティークのような風合いもあります。
また、淵に段差をつけることにより釉たまりが綺麗に出ます。

砂交じりの素地ですか?

本来ならば磁器土など不純物のない精製された土を使うことも可能ですが、不純物のない綺麗な土で同じ形を作ると、どうしても洗練されすぎたシュッっとした硬い冷たいイメージの作品が出来上がってしまいます。

荒削りな精製されていない砂混じりの土を使うことで、精製しつくされていない、いわば完璧すぎない土の表情を見ていただければと思います。

横にある線のようなものは、ろくろでの削りの際に砂が自然に引っかき傷をつけてくれて、それが表情の一部になっています。

個人的に雪輪シリーズがすごく好きです!どのように制作されているのですか?

丸いお皿の形から一つ一つ雪輪の形をカッターで切り取り製作しております。
可愛らしい形ですが縁を黒で引き締めることで凛とした印象になるようにいたしました。

雪輪は雪の結晶を抽象化させた日本の伝統文様ですがどこか洋風なイメージもあり、和食洋食どちらにもお使いいただけるかと思います。
和菓子やケーキを載せてもかわいいですが、アクセサリーを見せて収納するのに使っていただく方もいるようです。

一輪挿しは表面にうすく模様がはいっていますよね?

飛びかんなという技法で表面にテクスチャーをつけており、溝が深い部分には釉薬がたまり真っ白に、溝がない凸となった部分は釉薬が薄く土の表情が見え生成色になっています。

表面の凸凹を生かすための釉薬を見つけるために何度も釉薬のテストを行いました。まるで貝殻やレースのようにも見えてくるとお客様の中にはおっしゃってくださる方もいます。

急須もフォルムが素敵ですね

急須は後手の急須なので煎茶のみならず紅茶などにお使い頂くことも想定して、洋風なインテリアにも馴染むように、コロンとしたフォルムにして可愛らしいデザインにしました。可愛らしさの中に凛とした雰囲気も纏えるように作りは繊細にしております。

黒の急須は「炭化焼成」にて制作されているとお伺いしましたが、具体的にどのような技法なのでしょうか。

「サヤ」と言われる陶器製の容器の中にお米の籾殻と作品を一緒に入れて焼成しています。容器の中でお米の籾殻を不完全燃焼させることで粘土や釉薬に炭素を吸着させて黒く変色させています。表面の色の黒さやグラデーションは籾殻の量によって変わってきます。

人の手だけではコントロールしきれない、自然にできる色調変化が美しく、わたしは炭化焼成という技法がお気に入りです。

作家さんがどのような点にこだわって作品を作られてるのか、こうして知ることができると大切に使いたくなりますよね。

大和田さんの作品はシンプルで自然体、私たちにそっと寄り添い、凛とした美しさを内包しています。これからどのような作品を制作されるのか、非常に気になる作家さんです。

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