使い手の想像力を刺激する作品を
Interview
佐野 元春
シンプルで無駄のないフォルムの中に、高い芸術性と普遍的な美しさを持つ佐野元春さんの作品。ご自身が大切にしていることや作陶への思い、お気に入りの「Arts&Crafts」についてうかがいました。
設計の仕事から陶芸の世界へ
― 作家として活動を始めたきっかけを教えてください。
大学を出てから設計事務所に勤めていたのですが、設計の仕事に限界を感じていました。
その頃、たまたま入った本屋で、陶芸を学べる職業訓練校の存在を知って、勢いで応募したのがきっかけです。
― 作家として最初に制作したアイテムを教えてください。
直径15 センチほどのお皿です。
今でも自宅で使用していますが、使う度に当時の試行錯誤を思い出します。
最初に制作した皿。縁に欠けができても使い続けている。
作為の加減、余白のバランス
― 制作するうえで、大切にしていることはありますか?
制作する際に作為はつきものですが、その上で、作為の加減、余白のバランスを心がけています。
器は、使う人がそこに何かを入れて完成します。その空間、余白を大事にしたいと考えています。
― 制作する上で大変なこと、苦労していることはありますか?
夏場は窯を焚くと暑いし、冬は冷たい水で手がかじかむし(笑)。
基本的には肉体労働なので、身体がしんどいことは、もちろんあります。
でも、やっぱり好きなことなので、制作自体にはそんなに苦労は感じていません。
「焼成」という自分以外の力に委ねる
― 制作をされていて「楽しい」「嬉しい」と思う瞬間はどんな時ですか?
窯を開ける瞬間の期待と不安の入り混じった感覚は、他ではなかなか味わえないです。
最終的に窯での焼成という自分以外の力に委ねるというのが、陶芸の難しさであり楽しさでもあると感じています。
使い手の想像力を刺激するモノづくり
― ご自身の作品をどう楽しんで欲しいですか?
とにかく自由に使ってください。
そして、使って頂く方の想像力を刺激するようなモノづくりをしたいと思っています。
わたしのArts&Crafts
現在の工房を改修した際に屋根裏から出てきた蜂の巣です。
これが身近な自然の材料だけで作られていることに、とにかく驚き、なぜか惹かれてしまいます。
佐野 元春|陶芸家
2005年 武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒業
都内の建築設計事務所に勤務した後、
2012年 京都府立陶工高等技術専門校成形科修了
2012年 京焼窯元にて作陶開始
2018年 京都府南丹市にて独立
Instagram|@_toharu_
2022.09.02