秩序と揺らぎ、絶妙のバランス
Interview
福山 菜穂子
photo by Naoko Fukuyama
空間で浮遊するモビール。絶妙なバランスで揺れるやじろべえ。幾何学的なフォルムのパーツを使いながら、どこか懐かしさとあたたかみを感じる福山菜穂子さんの作品。ご自身の作品や作陶への思い、お気に入りの「Arts&Crafts」についてうかがいました。
自宅アトリエ周辺の景色
― 作家として活動を始めたきっかけを教えてください。
幼い頃から手芸や工作が好きで、美術系の高校、大学に進みました。手のなかでみるみるかたちを変えていくロクロ成形の面白さにはまり、焼き物の制作をはじめました。
― 制作するうえでのインスピレーション、大切にしていることはありますか?
長年使われてきた道具や、幾何学図形などに見られる秩序立てられたかたちからインスピレーションを得ています。ただ、土という素材で手仕事によって表現するときに生まれる“よれ”、“ゆらぎ”を活かすこと、そのバランスを大切にしたいと思っています。
アトリエのようす
― もの作りをされていて「嬉しい」「楽しい」と思う瞬間はどんな時ですか?
工作的なもの作りが好きなので、モビール作品では、焼きあがったパーツを組み立てていく作業が楽しいです。あと、展示の機会をいただいて、作品を並べて空間を作っていく作業がとても好きです。
素焼きのやじろべえとモビールのパーツ。上から釉薬と彩色を施し、作品に仕上げる。
― 「やじろべえ」はとてもユニークなモチーフだと思うのですが、制作をはじめたきっかけを教えてください。
初めて制作したのは “コーヒーに纏わる道具” の展示にお誘いいただいたときでした。
家でコーヒーを飲むときって、お湯を沸かすのに数分待ったり、お湯を注いでから数十秒蒸らしたり、人によっていろんな小さな待ち時間があるなと思って。「その時間を楽しめるなにか」として思いついたのがやじろべえでした。
浮遊するもので空間を作ることが楽しくなり、少しずつ展開させています。
― ご自身の作品をどう楽しんで欲しいですか?
眺めるものであり使うものであり、でも触れればただ焼き物である、という存在感を楽しんでほしいです。
わたしのArts&Crafts
ジョルジュ・モランディの画集です。
たまたま訪れた美術館で静物画を見て、”こんな佇まいのものが作りたい”と思いました。
大学卒業を控えて、これからも制作を続けていくのか、自分はなにを作りたいのかわからなくなっていたとき、ぼんやりと目指したい方向が見えた気がしました。
自分の表現に迷いが出たときに眺める本のひとつです。
福山 菜穂子 (ふくやま なおこ)| 作陶家
1991年 岩手県盛岡市生まれ
2014年 筑波大学 芸術専門学群 卒業
2016年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士前期課程 芸術専攻 修了
2017年より作家活動をスタートし、現在は茨城県の自宅アトリエにて作陶中
Instagram|@naoko_fukuyama
2022.02.02