「枯れているモノ、朽ちて果てたモノ、自然の力で生まれたモノ。
その静かな美しさを共有できたら幸せです」
Interview
noriyukiwatanabe
photo by noriyukiwatanabe
山梨県在住のオブジェ作家、noriyukiwatanabeさん。
彼の懐かしさと郷愁を誘う唯一無二の作品は、
どのようにして生まれるのでしょうか。
制作についてや素材への思い、
愛用の「Arts&Crafts」についてうかがいました。
工房の外観。この2階部分が工房になっている。
昔からずっと古材が好きでした
1.作家として活動を始めたきっかけを教えてください。
昔から古材などが好きで大切に集めていて、10年以上前から趣味程度に、古材を使って小屋やオブジェをつくっていました。
3年くらい前にずっとやっていたお店を一旦閉めることになり、ちょっと本格的に作ってみようかなと思っていたところに、友人のお店から置かせて欲しいとお話をいただきました。
それならちゃんと作家としてやらなきゃいけないと思って、活動を始めたのがきっかけです。
あと、以前からクラフトフェアに出てみたいという気持ちがあって、その参加資格として作家になる必要があったこともきっかけの一つでした。
以前のクラフトフェア出店の様子
最初の作品は、小屋のオブジェ
2.作家として最初に制作したアイテム(はじめて販売したアイテム)を教えてください。
たしか、小屋のオブジェだったと思います。
今よりもっとラフで、細かい細工はしていなかったです。
作家活動する前は自分のお店で売ったり、知り合いのイベントに出ては、売れたり売れなかったりゆるくやっていました。
2009年 趣味程度に作っていた時代に声をかけてもらって初めて販売した時
自分の心の中にある風景や好きなモノを、作品に落とし込む
3.制作するうえでのインスピレーション、大切にしていることはありますか?
古材や流木など、モノの形そのものから「これを作ろう」と思うことが多いです。
特に流木は、不思議と山に見えたり丘に見えたりします。
全体的な世界観は、自分が今まで旅先で見てきた景色が影響されていることが多いと思います。
自分の心の中にある風景や好きなモノを、現実的にも抽象的にもなりすぎないように作品に落とし込めるよう意識しています。
アイデアを絞り出す苦しさ
4.制作する上で大変なこと、苦労していることはありますか?
使う素材が、どうしても同じ物が2つと無いモノを使うこともあるので、気に入って沢山作りたいと思っても、叶わない事が多いです。
小屋や船などは「同じ物を作らない」と自分で決めてしまったので、アイデアを絞り出す苦しさはあります。
住んでいる森で眺める鳥の姿を作品に
5.ご自身の作品の中で、特にお気に入りのアイテムがあれば教えてください
毎回新しいモノに挑戦して、その都度お気に入りは変わるのですが・・・
最近では、鳥が飛んでいるモビールが好きです。
鳥が飛んでいるシーンをどうにか上手く表現出来ないか、色々試してきました。
住んでいる場所が森の中なので、鳥が好きになって、特に飛んでいる姿はいつ見てもいいなと。
今回、その伸びやかな姿を表現するのに、飛んでいる鳥の下に流木を大地に見立てて吊るしてみました。
とりあえず今のお気に入りは、これかな。
自然の静かな美しさを、それぞれの景色に重ねて楽しんで欲しい
6.ご自身の作品をどう楽しんでいただきたいですか?
静かに落ち着きたい時など、ふと目に入って心穏やかになれるような、そんな作品でありたいと思っています。
見てくれる方全てにそれぞれの景色があるので、重ね合わせて楽しんでもらえたら嬉しいです。
枯れているモノ、朽ちて果てたモノ、自然の力で生まれたモノ。
その静かな美しさを、共有できたら幸せです。
流木拾いのようす
わたしのArts&Crafts
以前モロッコを旅行した際、アイトベンハッドゥという世界遺産に行って、そこのお土産屋さんに小さなアイトベンハッドゥを木で削って作ってる人がいました。
なんとも素朴で、思わず1つ買いました。
それから10年以上経つのですが、今見ても「やっぱり敵わないな・・・」と思ってしまいます。
自分の作品作りで迷ったり悩んだりした時に、ふと眺めてしまう。
答えを求めているわけではなくて、単純に癒やされるのだと思います。
真似しても真似できるモノではないし、自分には自分のやり方がある。
作家でも職人でもないその素人さに今でも強く心を惹かれます。
noriyukiwatanabe | 造形物作家
2017年より作家活動スタート。
古木、錆びなどの素材を用いて、建物や船などのオブジェを制作。
“ 枯れたものたちを集め新たな造形物を作っています
見てくれる人それぞれの風景で完成させて下さい “
現在、八ヶ岳南麓のアトリエ兼ショップにて活動中。
自身のHPで日々更新される日記は独特の語り口で、作品と同様にこちらもぜひチェック。
HP|https://www.noriyukiwatanabe.info
Instagram|@_noriyukiwatanabe_
2021.10.22